バーティゴ、空間識失調について フライトシミュレータープレイヤーの所感

時事

War ThunderというゲームのフライトシミュレーターのゲームモードであるSBをよくプレイしているたけみやというものでございます。

昨日(2019年6月10日)航空自衛隊から、4月9日に発生しましたF-35A戦闘機の墜落事故の原因をバーティゴと推定する旨報道発表がありました。

原文は F-35A戦闘機墜落事故の要因と再発防止策について

改めて、搭乗員の方のご冥福をお祈りいたします。

今回、バーティゴという現象があまり実感のわかないものであるだけに、パイロットの方に対する不当な批判や、空自への不信が散見されます。その誤解を解くため、バーティゴについて解説していきたいと思います。

そもそもバーティゴとは?

バーティゴ(英:vertigo)とは本来高所から下を見た時のめまいという意味だそうです。

航空用語では自分の平衡感覚と現実の自分の位置、向きが異なってしまう現象を指します。

ひどい時には水平飛行していると思っているのに機体が横を向いていたり、空と海を誤認して気付かないうちに背面飛行しているときもあります。

パイロットで経験したことのない人はほとんどいないでしょうし、僕たちフライトシミュレーターゲームをプレイしているだけの人でも良く陥ります。

でもそんなの信じられない、という人は多いでしょう。地上では普通起らないものだからです。

空を飛んでいても視界が良ければまず起こりません。

でもたとえば、ディズニーランドのスターツアーズとかUSJのスパイダーマン・ザ・ライドとかに乗った人ならわかると思います。

僕はスパイダーマンの方にしか乗ったことがありませんが、自分の体が一気に建物の屋上まで上がったり、急降下した気分になりました。しかし終わってみるとアトラクションのある建物は意外に小さく、不思議に思った経験があります。

台の傾き、周りに映る景色、そして最低限の加速度で、体に起こる錯覚を利用したアトラクションです。これもある種のバーティゴといえるでしょう。

なぜバーティゴが起こるのか

なぜバーティゴが起こるのか。これを説明するには人間の平衡感覚の説明をしなくてはなりません。

人間の平衡感覚はおおよそ次の5つからなりたっています。

  • 視覚
  • 三半規管
  • 耳石
  • 体の曲がり具合
  • 体にかかる重力の向きや皮膚の圧力

飛行機に乗っている時点で体の曲がり具合、体にかかる重力の向きは平衡感覚に使用できなくなります。

体はただ椅子に座っているという情報を脳に伝えます。機体がどういう風に飛行してもそれは同じです。

また体にかかる体感の重力の向きは通常、常に機体の真下方向。これも当てになりません。

また事故当時は日没後(晴天であれば、まだ多少明るいかなかなという時間帯)です。

視界も役に立ちません。

結果三半規管と耳石という騙されやすい器官だけに、平衡感覚を任せてしまうという状況が生まれます。

三半規管は回転を、耳石は加速度を感じます。しかしどちらも慣性の法則を利用した器官なので、緩やかな回転、加速には反応しません。

例えば人を座らせ目隠しをします。ゆっくりと床を傾けていき、一気に戻します。こうすると実際は床は水平なのに傾いているように錯覚してしまいます。

飛行機に乗るとゆっくりと機体が傾くことなどよくあります。パイロットがバーティゴに陥ることも同様です。

ベテランパイロットがバーティゴに入るなんてありえない、パイロットに責任を押し付けるなという意見もありました。

しかし新米パイロットもベテランもバーティゴが起こることは避けられません。バーティゴに入るというのは決してその人の才能や努力が不足していたということではありません。その飛行機が欠陥品であるということにもなりません

これは地上で何億年と進化してきたヒトを、無理矢理機械で空に飛ばしている以上仕方のないことです。

バーティゴが起きても通常は大事には至りませんが、軍民問わず(自衛隊は軍に含めます)、バーティゴが原因とみられる事故は毎年起きていしまっています。

バーティゴに入ったらどうすればいいのか

基本的にバーティゴに入らない方法はありません。頭を急に降らない方がいいとかは聞いたことがありますが、実機に乗ったり、VRでプレイしたことはないので実際のことはわかりません。

しかし自分の乗る機体のパイロットがバーティゴに入ったらどうしよう。なんて不安になる必要はありません。旅客機では普通パイロットは2人以上いて、どちらかがバーティゴに入ったらもう一人が操縦します。

両方がバーティゴに入っても問題はありません。パイロットは計器だけを見て飛行できるように訓練されており、通常事故になることは極めてまれです。

実際にパイロットとしてゲームで飛行機を飛ばしているときは、こまめに計器を見るようにしましょう。バーティゴに入っているかどうか確認するためです。

バーティゴに入ったら、これはゲームだ、感覚と機体の向きが違うのは当たり前だと言い聞かせ計器だけを信用して飛びましょう。

僕は目の前にモニターのふちが見えるので現実に引き戻され、すぐに計器を信じて飛ぶことができます。

VRや実機の人は、もしかしたら相当気持ち悪いかもしれませんが計器を信じる、それだけです。

なぜ空自はバーティゴが原因だと推定したのか

自衛隊はブラックボックスを解析することはかないませんでしたが、機体の航跡はレーダーによって判明しています

管制の指示のより降下を行った事故機は途中これも管制の指示により左旋回。そして「roger,knock it off」(了解、中止する)と冷静な声で通信した後、約15秒でレーダーから消え、ほぼ同時に墜落したとみられます。つまりknock it offの時点では機体の異変はなかった/気づいていなかったということになります。

またその後通信も脱出も機体を水平飛行に戻す動作もしていないことから、その直後に

  • 通信機能と操縦機能をほぼ同時に失った
  • 通信機能と姿勢指示器がほぼ同時に使えなくなった
  • バーティゴ、パニック、病気、自殺などが原因で操作できなかった

くらいしか考えられません。

F35は味方とデータリンクが可能な機体です。今回も戦闘訓練であった以上データリンクは行っていたことでしょう。ある機体が通信機能や機体の機能を失ったら僚機もわかります。詳しくは機密なのでこれからも公表はされないでしょうが、自衛隊はそれはなかったと判断しているとみられます。

事故が起きた時から、病気や自殺の可能性も調査しているはず。というかその可能性が高い人はF35には乗れないはずだと思います。パニックを起こしていれば、めちゃくちゃな操作が記録されるでしょう。

F35はパイロットが酸欠に陥る事故があるという話を聞いたことがあります。(裏は取っていません)しかし墜落の15秒前まで普通に会話していたことが確認されています。数秒で酸欠になるには一酸化炭素中毒や極端に酸素濃度の低い空気を吸った時などしか考えられず、あまり考えにくいです。

政府がアメリカに配慮して本当の機体の不具合を公表しようとしないという話もネット上でまことしやかに流れています。

しかしそのアメリカは数千機のF35を運用するんです。すでにアメリカとその敵対国の空を何人もの貴重なF35パイロットが飛んでいます。F35の不具合の情報はアメリカも喉から手が出るほど欲しいものでしょう。

というかそもそも陰謀論は話せば止まらなくなるので、証拠が確認されるまでは基本無視がよろしいでしょう。

結果、バーティゴを起こし、急降下していることに墜落するまで気づかなかったというのが一番しっくりくる答えになります。もちろんこれは直接の証拠があるわけではないですし、今後の調査で変わる可能性はあります。

バーティゴに入るのは避けられません。自衛隊及び民間航空会社には、パイロットに十分な訓練と休養を与え、バーティゴその他の事態に対応できるよう、お願いするしかありません。


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